2017,05,01, Monday
借地権の認定課税を受けない方法としては、次の方法があるか思います。
Ⅰ相当の地代(固定方式・改定方式)
Ⅱ無償返還方式
Ⅱの「無償返還方式」とは、文字通り「土地の使用後は、土地をタダで返す。」という契約方法です。
何点か注意すべき点があり、列挙しますと、
①契約において、当事者の一方が法人であること
②期限までに税務署に届出書を提出すること
③契約書に「無償で返す」旨を記載すること
④地代を安くしすぎないこと 等
税務署は、土地の貸し借りついて権利金を支払わないでした場合、借主は貸主から借地権を贈与されたものとみなします。(これが「借地権の認定課税」と呼ばれるものです。)
でも、「相当の地代」を払っているならば、権利設定による利益はないものとして、課税しませんよ、としています。(法人税法)
しかし、「相当の地代」とは、簡単にいうと「土地の価格×6%」、100%÷6%=16.66・・→16年強で、その土地そのものが買えてしまう高額な地代です。
社長が持っている土地を自分の会社に貸し、権利金や高額の地代を払うのはおかしい!という意見が多くあり、昭和55年に「土地の無償返還に関する届出書」制度が制定されました。
将来、土地をタダで返しますと税務署に届け出れば、借地権の認定課税はしせんよ、という制度です。
順次、注意点を見ていきたいと思います。
① 契約において、当事者の一方が法人であること
無償返還制度は、法人税法で定められている為、契約当事者の一方又は両方が法人でないとこの届出書の提出はできません。
②期限までに税務署に届出書を提出すること
一定の届出書に一定事項を記載して、賃貸借契約書・土地の評価明細等を添付して税務署に提出します。
その際、”借地権の設定or使用貸借契約”を選択する部分がありますので、”借地権の設定”に○をつけ、賃貸借契約により土地の貸し借りをしています!ということを示します。これにより貸主に相続が生じた場合、8割評価や小規模宅地等の特例の使うことが可能となります。
ところで「期限」とは?
通達上は「遅滞なく」となっていますが、専門書の解説などには原則「賃貸借契約を結んだ法人の確定申告書の提出期限まで」となっていますので、その日までには提出。
③契約書に「無償で返す」旨を記載すること
賃貸借契約の一種ですから、契約書を作り、「無償で返す」旨を記載します。
無償返還方式は
「貸すとき権利金をとりませんので、返すときもタダで!」という契約ですので、契約書にもその旨をきちんと書きます。
(例)
第○○条 (無償返還について)
土地賃貸借契約を解除する際は、借主は貸主に対し、何らの対価を求めず、本土地を無償にて返還するものとする。
④地代を安くしすぎないこと
無償返還方式だと、地代は自由に決めることができます。(極論0円でもOK)
しかし、0円又は安すぎると相続が発生したとき、土地の評価が高くなってしまいます。(使用貸借となって、自用地評価となります。)
ですから、一般的には
「固定資産税×2~3倍」といわれています。
(地代の認定という問題がありますが、ここではその説明は、省略させていただきます。)
これらの注意点を踏まえ、無償返還方式を採用すれば、権利金や「相当の地代」のような高額の地代を支払わず「借地権の認定課税」を避け、かつ、貸主に相続が発生した場合、その土地については80%評価や小規模宅地等の特例(50%減or80%減)を適用することが可能となります。
東京尾本部 根生
2017,04,14, Friday
平成28年度補正「革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金」いわゆる、ものづくり補助金の採択結果が出ました。
平成28年11月14日から平成29年1月17日まで公募を行い、全国で15,547件の申請があり、6,157件が採択されました。(採択率は39.6%)
税理士法人優和 京都本部では、認定支援機関として、6件の申請支援を行いました。支援結果は次のとおりです。
都道府県 京都府 大阪府 滋賀県 合計
支援件数 4件 1件 1件 6件
採 択 数 4件 0件 0件 4件
採 択 率 100% 0% 0% 66%
京都地域におきましては、前年以前からの実績から採択率100%という実績を確保できたものの、近隣他府県では採択を勝ち取ることができませんでした。しかし、全国平均の約1.6倍の採択率は全国の認定支援機関の中でもトップクラスの実績です。
また、今回の支援実績をふまえ、次回に向けた近隣他府県対策も万全の体制で取り組むことが出来そうです。
平成28年度の二次公募や平成29年度のものづくり補助金の有無は分かりませんが、本補助金又は類似する補助金は今後も見込めると思われます。
税理士法人優和では、税務顧問サービスだけに留まらず、組織経営を活かした税務ソリューションサービスを展開する全国でも数少ない税理士法人です。
当然に京都本部での実績は東京・埼玉・茨城の各本部と情報を共有しているため、関東エリアでの対応も可能です。
認定支援機関はぜひ、税理士法人優和にご相談下さい。
2017,03,31, Friday
不動産を売却した場合、利益に対して譲渡所得が課税されます。一般的には、20%(所得税15%、住民税5%)となり、先祖代々から保有している土地などの場合、かなりの税金が課税されることになります。
最近、空き家問題が注目されていますが、税制面でもこの空き家問題を解消する策が講じられました。相続等により被相続人居住用家屋及びその敷地を取得した個人が、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間にその取得した家屋及びその敷地を売却した場合には、利益から3,000万円を控除することができるようになりました。
要件は以下の通りです。
① 相続開始以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
② 売却価額が1億円以下であること。
③ 被相続人が1人で住んでいた家屋及びその敷地であること。(マンション等を除く)
④ 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
⑤ 相続開始後、事業用、貸付用、居住用に供されていないこと。
⑥ 譲渡の時において耐震基準に適合する家屋であること又は家屋の全部を取り壊してから譲渡していること。
簡単に言うと、1軒家に一人で住んでいた方が亡くなり、空き家のまま約3年以内に売却した場合、要件に合致すれば譲渡利益から3,000万円を控除してくれます。ここで気をつけなければならないのは、耐震基準に適合していない家屋の場合は、売ってから相手方が取り壊すのではなく、売る前に売る側が取り壊すことがポイントです。これを間違えると、要件を満たさなくなるため、注意が必要です。 相続が開始する前からのちのちどうするかを考えておくことが重要です。
税理士法人 優和 京都本部
中村 真紀
2017,03,15, Wednesday
-耐震基準適合証明書が必要な場合-
Point:中古物件を購入し、住宅ローン控除を受けたいと考えている方は、購入前から住宅ローン控除を受けるための計画が必要と考えられる。
本日は確定申告の最終日ですが、年末調整から、確定申告にかけて住宅ローン控除の恩恵を受けられた方も多々いることでしょう。
中には中古物件を購入した方もいると思います。
しかし、この中古物件による住宅ローン控除を受けるためには次のような要件があります。
①耐火建築物(コンクリート造)→築25年以内
②非耐火建築物(木造)→築20年以内
③①②の年数を超えた場合の物件が耐震基準に適合すること
ここで、気を付けたいのが、③の要件です。
なぜなら、耐震基準に適合する物件であるか否かは中古住宅を売主から引き渡される以前に、売主名義の耐震基準適合証明書を得る必要があるからです。
そのため、確定申告時期になって必要な書類を揃えるときに、この売主名義の耐震基準適合証明書がなければ、住宅ローン控除を受けることができません。
もっとも、引き渡し以前に、耐震基準適合証明書の仮申請書を得ることで、引き渡し後の修繕等で耐震基準適合証明書を得ることができますが、それでも引き渡し以前に申請をする必要があります。
このように、耐震基準適合証明書は、銀行から住宅ローンの残高証明書をもらうように、確定申告時期になって得られるものではないのです。
以上から、これから、中古物件を購入し、年末調整や確定申告で住宅ローン控除を受けようと考えている方で、耐震基準の要件を満たす必要がある場合には、住宅の契約前から計画的に行動する必要があると考えられます。
茨城本部 大河原
2017,03,01, Wednesday
早いもので今年も3月に入り、確定申告でてんやわんやな時期になってきました。さて、今回は確定申告においての重要論点である医療費控除について記載したいと思います。
医療費控除とは、自分や配偶者・親族のために医療費を支払った場合に支払金額に応じて納付すべき税金の額を軽減してくれる制度です。
但し、親族のための医療費支払いについては生計を一にしている必要があります。
また、医療費控除を受けるには確定申告が必要となります。
医療費の範囲は大きく八項目あるのですが、全て列挙すると長くなってしまいますので、例示させて頂きます。迷った際は顧問税理士等にお問い合わせください。
① 医師・歯科医師による診療対価⇒〇
但し、健康診断の費用・診断書の費用・差額ベッド代⇒×
② 治療に必要な医薬品の購入費⇒〇
風邪薬は〇、ビタミン剤や美容目的のものは×
③ 交通費(電車・タクシー等)⇒〇
但し、本人分のみ(付添人の交通費は×)
④ あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師による施術料⇒〇
但し、疲れを癒す等の目的だと×
上記の施術に関しては、神経痛や腰痛を治療する目的であることが必要です。
医療費控除の趣旨としては、多額の医療費を支出した人は担税力が減ることになるので、その分だけ税額を減額するべきという点にあります。
該当する場合には、適正に申告し過大に税額を負担することがないよう留意しましょう。またセルフメディケーション税制が平成29年1月1日より開始されています。今後は両制度を比較して有利な税制を適用することになります。
では、花粉症が辛い・大変辛い時期になって参りましたが皆さまも御身体を大切にしてください。
本ブログがお読みいただいた方の参考に少しでもなれば嬉しいです。
茨城本部
楢原 英治
2017,02,16, Thursday
税法においては取引相場のない、いわゆる非上場株式の評価額を決定するということは厄介な問題の一つであります。というのも会社の株主構成や相続贈与等の状況によって評価方法が全く変わってしまうことも有り得るからです。
その典型的な評価方法に配当還元評価方式という評価方法があります。その詳細は割愛しますが、要はその株式を手にしても持ち株割合(厳密にいうと議決権割合)が低く会社経営に影響を及ぼすこともなくただ、配当を得ることしか目的がない場合に通常の評価と比べて低く評価されるというものです。相続税や贈与税の税額を算定するにあたり税額を低く抑えることができるという意味においてとても有利な評価方法なのですが、ここで気をつけなくてはならないことの一つに「種類株式」の存在があります。
持ち株割合を判定するためには、その「持ち株数」の割合で判定するのではなく「議決権数」の割合で判定することとなります。昨今の会社法においては、株主によって会社支配が目的の株主もいれば、配当が目的の株主もいるという状況を鑑みて同じ株式であっても議決権数に差をつけるということがよくあります。同じ1株であっても配当を優先する場合は議決権がゼロのこともあるし、配当よりも会社経営に重大な影響を及ぼしたい場合は、1株の議決権数が10だったり100だったりすることも考えられます。
そうなったときに持ち株数でその割合を判定してしまうと、評価額が通常低い配当還元方式だと思ったものが実は原則的評価方式だったということも十分にありえることなのでくれぐれも気を付けたいところです。
種類株式には「拒否権付株式」俗に言う「黄金株」というものもあります。これは株主総会の決議のほか、拒否権付株式の株主で構成する種類株主総会において会社の決定事項である取締役、代表取締役の選任、解任のほか事業譲渡、合併、解散といったものを拒否する権限をもった株式であり、とても強大な権限を持った株式です。最近よく耳にする某国大統領が発令する「大統領令」と何となく似ていると思ったのは私だけではないのではないでしょうか。
ここで一つ注意が必要なこととして、種類株式の発行にあたっては一度現在発行されている株式を会社が回収し種類株式として同数株式を再び付与することとなり、その時に取得原価から時価にて譲渡があったということで時価が取得原価以上の場合、譲渡所得が発生することとなりますのでくれぐれも気を付けたいところです。
埼玉本部 菅 琢嗣
2017,01,31, Tuesday
平成29年度の税制改正大綱においては配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し等、重要な改正がいくつかあがっておりましたが、今回は取引相場のない株式の評価の見直しについてピックアップしてみました。
取引相場のない株式、いわゆる非上場株式の評価の方法のひとつに類似業種比準方式というものがあり今回の改正でこの類似業種比準方式について
(イ) 類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える
(ロ) 類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする
(ハ) 配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について1:1:1とする
といった改正が行われることとなりました。
(イ)については現行の株価決定の方法に納税者選択のオプションが一つ加わったということなのでどの納税者にとって有利な改正となりそうです。
(ロ)については有利にも不利にもなる感じがして何とも言えないところでしょうか・・・。
(ハ)についてはそもそも取引相場のない株式に値段をつけるという行為自体その時価の根拠はとても乏しいものなのでしょうが、あえてその根拠を見出すとすれば配当金額、利益金額、簿価純資産価額が株価構成に最も影響を与えるということで通達ではこれらを1:1:1(いわゆる3要素が同等)の比重で評価しましたが平成12年の通達改正以降これらの比重が1:3:1に変更となり、要するに株価形成の要素のうち収益力が配当や純資産よりも強く影響していたということです。
だが、「昨今の上場会社のデータに基づき検証作業等をした結果」改正前の1:1:1の比重に戻すとのことらしいです。
株価形成の要素は、もう一度じっくり調べてみたら最近は大体同じくらいの比重だったということらしいですが、個人的には上場株式の株価浮沈の影響を最も受けるのは会社の業績であり、その次に配当性向といったところだと思っているので(昨今では某国大統領の一挙手一投足が異常に影響したりしておりますが・・・)一体どのようなデータに基づきどのような検証作業を行ったのか知りたいところですが、株価評価が必要そうな非上場の会社のオーナー社長にとっては概ね有利な改正なので「よし」ということなのでしょう。
埼玉本部 菅 琢嗣
2017,01,17, Tuesday
公益法人は、公益目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えてはならないという制約を受けます。この制約のことを収支相償といいます。
収支相償は二段階で判断されます。まず第一段階として、各事業単位で収支を見ることになります。第一段階において収入が費用を上回る場合には、その額はその事業の発展や受益者の範囲の拡充に充てられるべきものであり、当該事業に係る特定費用準備資金として計画的に積み立てることによって収支相償の基準を充たすものとなります。第二段階では、第一段階の収支相償を充たす各公益目的事業に加え、必ずしも特定の事業に係る収支に含まれないものの、なお法人の公益活動に属する収支も加味し、法人の公益活動全体の収支を見ることになります。
剰余金が生じた場合には、解消計画の説明等が必要となります。
東京本部 小林
2016,12,28, Wednesday
専業主婦世帯などの所得税負担を軽くする「配偶者控除」制度の見直しをめぐり、政府が配偶者の年収制限を「150万円以下」に引き上げることなどを盛り込む方針を固めました。2017年度税制改正大綱に方針を盛り込み、年明けの通常国会に法律改正案を提出する予定です。
政府の方針では、配偶者の年収の制限は、現在の「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げ(減税)、その一方で、世帯主の年収が1120万円を超えると控除額を段階的に減らし、1220万円で対象外とする模様(増税)。
配偶者控除をめぐっては、専業主婦世帯を念頭においており、夫婦の働き方が多様化した現代にそぐわないといった批判があったため、制度を廃止して、夫婦であれば働き方に関係なく適用する「夫婦控除」の導入が検討されていましたが、結局導入は見送られました。共働きの世帯が多くなり、配偶者控除は「103万円の壁」と言われ、女性の就業意欲を下げ、また専業主婦への過度な優遇であると批判されてもいました。
個人的には、「103万円の壁」が「150万円の壁」になっただけでは、主婦の就業促進や専業主婦の過度な優遇という考え方の根本的な解決にはならないと思います。
配偶者控除の基準が見直されたとしても、会社独自の配偶者手当の廃止や基準見直しがされなければ、女性の就業意欲の引き上げ効果は限定的にとどまるのではないかと思います。(この他にも、年金や健康保険の社会保険料の支払いが義務付けられる『130万円の壁』も存在していますし。)
就業形態による不公平感を減らすために、各家庭が考慮された家族控除等が新設されることを望みます。
東京本部 根生 隆行
2016,12,15, Thursday
今年も出ました「ものづくり補助金」
例年よりかなり早めの公募開始で、平成29年1月17日(火)が期限となっております。
年末年始をはさむこのスケジュールに、皆様まだまだ準備ができていない方もおられるのではと思います。
管轄する中央会の担当者の方も「まさか今年も予算がつくとは・・・・」と思うぐらい、中小企業からのニーズがとても高い補助金のようです。
ただ、今年は予算額が大幅にダウン(前年の約25%ダウン)となりましたが、他の新しい補助金などもあるので、ものづくり補助金の対象とならなかった方にもチャンスが広がるかと思います。
さらに今年は第四次産業革命型(前回のいわゆる「Iot」の発展型)に高い機能が要求され、「AI」や「ロボット」といった細かな規定が設けられております。
また、賃上げによる割増要件などの新しい規定も設けられ、Iot、AI、ロボットでなくとも一定の要件を満たせば最大で3,000万円までの引き上げが可能となります。
では、今年は誰もが3,000万円を狙うべきか・・・・・と言うと、実はそうでもないようです。
まず、「第四次産業革命型」
単純に設備と事業内容がこれに合致する方は、間違いなく3,000万円狙いだと思います。
気を付けるべきは、賃上げ要件による割増を狙う方
ここを狙う企業さんは従業員数が少ない方向けです。
ものづくり補助金は従業員が300人以下(製造業の場合)は対象となりますが、この賃上げ要件の対象となる方は、最大で約31人となります。
この31人分の賃上げとなると、そのコスト増加額で補助金の割増額を超える可能性もあります。
以上の点から「第四次産業革命型」の対象とならない方で従業員数が一定以上の企業は、「一般型の1,000万円」が狙い目ではないかと思います。
税理士法人優和では、認定支援機関として、皆様のものづくり補助金の申請支援にも力を入れております。
ご興味の方は、ぜひ一度、税理士法人優和までお問い合わせ下さい。