Ⅰ相当の地代(固定方式・改定方式)
Ⅱ無償返還方式
Ⅱの「無償返還方式」とは、文字通り「土地の使用後は、土地をタダで返す。」という契約方法です。
何点か注意すべき点があり、列挙しますと、
①契約において、当事者の一方が法人であること
②期限までに税務署に届出書を提出すること
③契約書に「無償で返す」旨を記載すること
④地代を安くしすぎないこと 等
税務署は、土地の貸し借りついて権利金を支払わないでした場合、借主は貸主から借地権を贈与されたものとみなします。(これが「借地権の認定課税」と呼ばれるものです。)
でも、「相当の地代」を払っているならば、権利設定による利益はないものとして、課税しませんよ、としています。(法人税法)
しかし、「相当の地代」とは、簡単にいうと「土地の価格×6%」、100%÷6%=16.66・・→16年強で、その土地そのものが買えてしまう高額な地代です。
社長が持っている土地を自分の会社に貸し、権利金や高額の地代を払うのはおかしい!という意見が多くあり、昭和55年に「土地の無償返還に関する届出書」制度が制定されました。
将来、土地をタダで返しますと税務署に届け出れば、借地権の認定課税はしせんよ、という制度です。
順次、注意点を見ていきたいと思います。
① 契約において、当事者の一方が法人であること
無償返還制度は、法人税法で定められている為、契約当事者の一方又は両方が法人でないとこの届出書の提出はできません。
②期限までに税務署に届出書を提出すること
一定の届出書に一定事項を記載して、賃貸借契約書・土地の評価明細等を添付して税務署に提出します。
その際、”借地権の設定or使用貸借契約”を選択する部分がありますので、”借地権の設定”に○をつけ、賃貸借契約により土地の貸し借りをしています!ということを示します。これにより貸主に相続が生じた場合、8割評価や小規模宅地等の特例の使うことが可能となります。
ところで「期限」とは?
通達上は「遅滞なく」となっていますが、専門書の解説などには原則「賃貸借契約を結んだ法人の確定申告書の提出期限まで」となっていますので、その日までには提出。
③契約書に「無償で返す」旨を記載すること
賃貸借契約の一種ですから、契約書を作り、「無償で返す」旨を記載します。
無償返還方式は
「貸すとき権利金をとりませんので、返すときもタダで!」という契約ですので、契約書にもその旨をきちんと書きます。
(例)
第○○条 (無償返還について)
土地賃貸借契約を解除する際は、借主は貸主に対し、何らの対価を求めず、本土地を無償にて返還するものとする。
④地代を安くしすぎないこと
無償返還方式だと、地代は自由に決めることができます。(極論0円でもOK)
しかし、0円又は安すぎると相続が発生したとき、土地の評価が高くなってしまいます。(使用貸借となって、自用地評価となります。)
ですから、一般的には
「固定資産税×2~3倍」といわれています。
(地代の認定という問題がありますが、ここではその説明は、省略させていただきます。)
これらの注意点を踏まえ、無償返還方式を採用すれば、権利金や「相当の地代」のような高額の地代を支払わず「借地権の認定課税」を避け、かつ、貸主に相続が発生した場合、その土地については80%評価や小規模宅地等の特例(50%減or80%減)を適用することが可能となります。
東京尾本部 根生
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