2014,06,16, Monday
現オーナー経営者である父親も永年にわたる経営努力により会社の規模もそれなりとなり、自身の年齢もそれなりとなると、次の後継者をだれにするか、そして自社株の相続税への影響といった問題に直面します。
子供が後継者となることが決まっている場合は、相続時に想定される相続税の税率等を比較しながら自社株の生前贈与を繰り返すことにより、いずれ訪れる相続税の負担を軽減させることができます。
また、最近では贈与税の納税猶予の特例(特例を受けるためには、先代経営者は贈与時までに自社の役員を退任する等の要件があります)を利用することによってより一層相続税の負担軽減ができるようになりました。
ただ、ここで注意すべきこととして「遺留分」の問題があります。遺留分とは、民法において遺族の生活の安定や最低限の相続人の間の平等を確保するために相続の権利を保障するものです。遺留分の額は遺産に一定の生前贈与財産を加え、負債を差し引いた財産である遺留分算定基礎財産に法定相続分の2分の1(相続人が父母のみの場合は3分の1、兄弟姉妹は遺留分なし)を掛けて算出されます。
そして、遺留分を侵害された遺留分権利者は、相続開始後に、受贈者・受遺者に対して「遺留分減殺請求権」を行使することによって、贈与・遺贈財産の返還(又は価額弁償)を受けることにより、遺留分を確保することができます。
となると例えば、相続人が子供のみ3人。相続財産は、現預金、不動産で5000万。自社株は、現経営者である長男がすべて事業承継時に贈与を受けておりその当時の相続税評価額が5000万。
このような場合、生前贈与された自社株は贈与時でなく、相続開始時の評価で計算されることから、相続開始時の評価額が現経営者の長男の努力の甲斐あって2億5000万円になったとすると、遺留分算定基礎財産は現預金、不動産と合算して3億円となります。
そうなると残り2人の兄弟は3億円の法定相続分3分の1のさらに2分の1にあたる5000万円を遺留分減殺請求によって確保することが可能となり、長男は株式以外の相続財産で足りない分については自身の保有する自社株を分散もしくは自身の所有する現預金を他の兄弟に渡すこととなってしまいます。せっかく自身の経営努力によって会社の株の評価があがってもこの様な事態となってしまっては、本末転倒です。
この様な事態に対応するために経営承継円滑化法によって「遺留分に関する民法の特例」を規定しております。
この民法特例を活用すると、後継者を含めた先代オーナー社長の推定相続人全員の合意の上で、先代オーナー社長から後継者に贈与された自社株について、遺留分算定基礎財産から除外(除外合意という)又は、遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の評価額に固定(固定合意という)することができます。
除外合意をすると後継者が先代オーナー社長から贈与によって取得した自社株について他の相続人は遺留分の主張ができなくなることから、相続によって自社株の分散を防止することができます。
固定合意をすると自社株の評価が上昇しても遺留分の額に影響がないことから自身の経営努力が想定外の遺留分を生みだすといった不条理なことは起こらなくなります。
この民法特例を利用するには、合意時点において3年以上継続して事業を行っている非上場企業で先代オーナー社長が過去又は合意時点において会社の代表者であり、後継者は合意時点において会社の代表者で自社株贈与により会社の議決権の過半数を保有しているという要件を満たした上で推定相続人全員の合意を得て、合意した日から1カ月以内に「遺留分に関する民法の特例に関する確認申請書」を経済産業大臣に申請し、経済産業大臣の確認を受けてから1カ月以内に家庭裁判所に申立てをし、家庭裁判所の許可を受けることが必要です。
せっかく相続対策をしたつもりでも思わぬところでトラブルに巻き込まれることもあります。自社株贈与については、万全の対策をとりたいものです。
埼玉本部 菅 琢嗣
2013,12,16, Monday
- 適正な月次損益の把握 ―
会社の成長には商品力が欠かせないという話を以前にしましたが、税理士事務所にとっての商品力とは何でしょう。商品のひとつとして決算書があります。決算書は作る者によって結構変わるものです。作る側が誰に向けて作成しているのかでも変わります。本来、お客様や株主に向けて作成するのですが、税務署向けに作成している税理士事務所も少なくはありません。ケースバイケースで考え方は変わるものの、せめて試算表くらいはお客様に向けて作成すべきではないでしょうか。お客様にとって適正な損益を把握できる試算表のことをここで「月次決算書」と呼ぶことにします。イメージとしてはいわゆる決算書に近い数字ものを毎月作成するようなものです。違う言い方をすれば、精密度の高い月次試算表です。
月次決算書と言えば大そうなものに聞こえますが、いわゆる決算書ほど精密である必要はありません。当月の適正な期間損益把握が大まかに行うことが出来れば充分です。では具体的にどのようにすればよいのでしょうか。大きくは以下の通りです。
☆ 発生主義で計上する。
☆ 在庫を計上する。
☆ 引当金の計上を行う。
☆ 税抜き経理を行う。
☆ 減価償却費を計上する。
☆ 仮勘定を使わない。
☆ 税金の未払計上を行う。
【 発生主義で計上する 】
売上、仕入、経費について当月に発生したものを売掛金、買掛金、未払費用等で計上します。入金や支払いがあったときに損益を認識されている場合は、決算で大きく数字が変わってくることがあるため注意してください。月次決算では手間も考慮して、少額なものは計上しなくても問題がありません。
【 在庫を計上する 】
概算でもよいので、毎月在庫を計算します。例えば月末近くに100万円の仕入を行い売上は翌月となった場合、100万円の在庫を計上しなければ、当月の損益は100万円違ってきます。会社の規模により一定の基準を設けて実施すればスムーズに行えるでしょう。
【 引当金の計上を行う 】
賞与引当金、退職給与引当金、その他大きな支出が予想されるものを毎月引き当て計上します。年に1度だけ賞与を支払うような会社であれば、賞与の支払い月だけが大きく経費が増えてしまいます。しかし賞与の支給は1年を通して徐々に発生していきますから、本来賞与の支給月以前にも経費負担が発生しているため概算で計上します。税務上認められないから計上しないというのは、税務署に向けて仕事をしているようなものです。
【 税抜経理を行う 】
税込み経理を行っていると、月々は消費税の納税分だけ利益が多く計上されてしまい、決算で消費税の納税分だけ損益が変わることになります。どうしても税込み経理が良い場合は、納税分だけ経費を見積もり計上しましょう。
【 減価償却費を計上する 】
当期の減価償却費がどれだけあるということを認識されている経営者の方は、実際多くないのが実情です。ということは、減価償却費分だけ経営者の方が思われている利益と決算書の利益に差が生じてしまいます。減価償却費も考慮して損益を把握しましょう。
【 仮勘定を使わない 】
期中に問題があるような場合、とりあえず仮勘定(仮払金、立替金、仮受金など)で処理する場合があります。精算予定があるときは別として、出来る限り早い段階(原則として翌月)で問題解決を行いましょう。
【 税金の未払計上を行う 】
会社の利益は、税金を払ったあとの金額です。月次決算を行うことにより現段階でどのくらいの納税が発生するということが把握できます。 それを未払計上することにより本当の損益の把握が可能となります。
以上7つの点について簡単に説明させていただきましたが、御社ではいくつ実施されていますか? 「そのようなことは当たり前にできている。」という経営者の方には申し訳ない話でしたが、もし興味を持っていただいた方は、是非、当税理士法人優和の担当者にご相談下さい。思っているほど手間は掛からないにも関わらず、大きな効果が期待できることでしょう。
京都本部 中村
2013,12,01, Sunday
- あなたの会社は発展、現状維持、衰退のどの段階? ―
先日、あるコンサルタントの方と食事をする機会がありました。お酒がすすむうちに熱い話へと発展していき、折角なので勉強させていただきました。コンサルといっても様々な種類があるのですが、今回は企業の成長という観点からのものです。企業が成長していくには以下の6つの点が重要となります。
① 営業構造
② 商品力
③ 組織構造
④ 人材育成
⑤ 組織風土
⑥ 財務体質
税理士事務所を例に考えてみます。
【営業構造】
どのような営業をしていくのか。 継続的な仕事を獲得するのか又は単発の仕事を獲得するのか。お客様のターゲット層(規模、業種、地域など)をどうするのか。 マーケティングについても行います。
【商品力】
営業構造が決まれば、次に何を売るのか? 商品がなければ営業の仕様がありません。よく税理士事務所に「何が得意ですか?」と聞くと「何でも幅広くやっています。」という答えがかえってきます。それもひとつの商品なのですが、大きな商品力とはなりません。何を売っていくのかを明確にし、自社の商品を絶対的なものに確立させます。
【組織構造】
営業構造と商品力が決まれば、それをどのような組織でやっていくかを考えます。税理士事務所の仕事でもいろいろとあります。入力作業をする者、商品を作り上げる者、社長様と直接話す者、外部に営業する者、総務的な仕事をする者、管理をする者など様々です。小規模な先では一人ですべてを兼業していることが多いでしょう。成長を意識するなら改善した方がよいでしょう。
【人材育成】
組織が決まれば、どのような人材をどのようにして育てていくのかを考えます。足りないから補充を繰り返すといった具合では成長は見込めません。先を見た人材育成が必要です。
【組織風土】
すべて形式に当てはめるわけではなく、特色を出すことも重要です。理念にあった組織風土を大切にします。あまりに形式にとらわれすぎると組織がうまく稼働しないことになる場合もあるので注意が必要です。
【財務体質】
財務体質を見直し、資金繰りがうまくいくようにします。決算期が重なれば単月ではマイナスになる月もでてくるため、その時期に合わせてプランを練ります。必ず事業計画を作成しましょう。お客様には作成を勧めますが、自社では作成していない税理士事務所もあるようです。
以上、簡単な説明でしたが、すべて考えてやっているという会社であれば成長していく会社といえるでしょう。現状に満足している会社であれば現状維持、営業する余裕などないという会社であれば衰退をたどるでしょう。すぐに効果があるわけではないですが、こつこつと積み重ねることによりきっと会社が成長していくことになるでしょう。
京都本部 中村
2013,10,01, Tuesday
平成24年度補正予算で創業補助金という補助金制度が創設されました。
簡単に内容を整理すると、平成25年3月23日以降に新たに起業された方や先代より引き継いだ事業について業態転換もしくは新事業へ進出される方に対し、その創業等に要する費用の一部を国が補助するというものです。
この補助金を受けるには、前提として経営革新等支援機関に認定された金融機関もしくは、金融機関と連携した認定支援機関(会計事務所が主)によって創業等の事業計画策定支援、実行支援の確認を行う必要があります。
今回、この補助金の要件に合致する関与先があり、申請してみることになりました。
創業補助金の場合、創業するにあたりかかった費用のうちの2/3にあたる金額(最低100万円から最高で200万円)の補助を受けることができます。創業にあたっては、従業員を雇い、店舗を賃貸すれば年間300万円くらいの経費はかかることから、だいたいの場合は補助金対象の条件に合致する可能性は高いのですが、一番問題となるのは、事業計画の説明書を作成することです。
その事業計画説明書が審査委員会によって審査され、説明書の出来次第で補助金の採決の可否がほぼ決まります。
具体的にはその事業の商品サービスの独創性(商品サービスが他と何が違うのか?独自性は?)商品サービスの需要(市場ニーズはあるか?)事業計画の明確性(実現可能な事業計画を数値としてまとめる)等・・・。できる限り具体的に熱意をもって書くこと等・・・。文章だけだと審査員もイメージしづらいので、店舗や商品の写真を添付することも戦略の一つとなります。
とりあえずは本人に記入してもらいますが、ほとんど我々が大幅加筆修正することとなりました。
注意すべき点として会計事務所が認定支援機関であっても金融機関との連携が必要となり、両者との間の覚書が必要となります。
今回提出期限最終日の提出となったのですが、我々会計事務所が認定機関であれば金融機関との間の覚書は必要ないと誤解してしまい、当日、提出期限2時間前に金融機関にお願いしてなんとか間に合いました。(金融機関としても稟議の問題等で押印については即日は無理とのことでしたが、事情を理解していただきなんとか押印してもらいました)
そして審査委員会の厳正なる審査を受け、先日第二回募集の2次締め切り分にて採択されたとの通知が関与先創業者宛に届きました。
今後は、1年間の補助対象事業の完了後、30日以内に完了報告書を提出し、実施した事業内容の審査と使った経費内容の確認が終わり次第、補助金を受け取ることができます。ただ、その後も5年間にわたり事業化状況の報告、収益状況の報告が義務付けられております。200万円もの金額を受け取れる訳ですから当然といえば当然ですが・・・。
ここで一つ気になることがあり、収益状況の報告の中に「一定以上の収益が認められた場合補助金の額を上限として収益の一部を納付していただきます」という文言があります。
このことについて創業補助金事務局に問い合わせたところ、もらった補助金よりも事業にかかったすべての費用が多い場合この要件に合致せず収益の一部を納付する事態には、ならないとのことでした。更に今までも同様の補助金で今回のような収益の一部を納付するといったケースはなかったそうで、納付はほぼ稀なケースと言えそうです。
埼玉本部 菅 琢嗣
2013,08,15, Thursday
仕事が終わってからは、できるだけ自分の能力を上げる努力をしようと心掛けています。
一区切りしたので、優和公認会計士共同事務所が編集した「もう悩まない 資金繰りがわかる本」というのを読み返してみました。以前に読んだときには気付かなかったことが、自分の実力があがれば見えてきます。 今回は資金繰りに関心があるということもあり、前回読んだときとは全然感じ方が違いました。 少しは私も成長したのですかね?
いつも思うのですが、いいことが書いてあるなぁで終わらず、それらを一つでも多く実行することが大切ですね。
まだ読んだことがない方は、是非読んでください。
京都本部 中村
2013,05,10, Friday
2008年12月に「民による公益の増進を目指して」という標語のもと、新しい公益法人制度が施行されました。そして、従来の公益法人は、公益社団・財団法人もしくは一般社団・財団法人に移行するため、平成25年11月30日までに内閣府もしくは都道府県に移行申請し、その上で、移行認定・移行認可を受ける必要があり、申請を行わなかった場合には解散となります。あと約半年でその期限が迫っています。
さて、大きな括りとしてはNPO法人も、民による公益の増進の一端を担うものと思われ実際にその数は年々増えてきています。NPO法人会計基準については、2010年7月20日に、全国各地のNPO支援センターからなるNPO法人会計基準協議会他を主体として策定(2011年11月20日一部改正)されております。しかし、これは法定された基準ではなく、公認会計士又監査法人による会計監査を受けるための会計基準として認められているものではありません。
反面、NPO法第27条第3号においては、作成する計算書類等は活動計算書・貸借対照表・財産目録とされており、旧法の収支計算書・貸借対照表・財産目録から改正されていることなど新しい会計基準をベースにした変更がされています。(その他、諸論点がありますが、今回は割愛します。)そこで現状は、法定された会計基準は存在しないものの、中長期的に考えれば、民による公益の増進を有効なものとするため、拠り所とするにふさわしい共通集約的目安として新会計基準は存在意義を有していくのかと思います。
2013,01,07, Monday
新年あけまして、おめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
平成25年度のはじまりということで、本年の抱負を記載させて頂きたく思います。
本年の抱負は、『明るく、笑顔で、元気になろう!!!』をテーマに掲げて、顧問先様はもちろんのこと、職員、家族、自分に関わる全ての人と笑いあえるような楽しい一年にしたいと思います。
「笑ったって業績なんか良くならないよ、笑ってないで何とかしてよっ」とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、ポジティブな思考は人の作業効率を向上させることが脳科学の観点からも証明されています。
『笑う門には福来たる』ということで、本年も笑顔を第一に宜しくお願いいたします。
本年度も、皆様の御多幸をお祈りしております。
公認会計士・税理士
楢原 英治
2012,11,26, Monday
◆売掛金の回収・管理は重要業務
売上を伸ばすことは重要なことですが、商品(サービス)を売っても、その売掛金を回収できなければ
商品の代金だけでなく、売るまでに費やしたコストも損失となるため、その分を取り戻すには同じ商品を何度も売らなくてはなりません。
また、回収までの期間が長ければ、資金繰りが悪化し黒字倒産につながりますので、売掛金の回収・管理は事業を継続するための重要な業務です。
長期間滞っている売掛金がある場合は、原因を把握した上、話し合いで解決を図ることが大切ですが、支払う意思が見られない場合は法的手段(支払督促や少額訴訟など)も検討します。
なお、時効(商品代金は2年)が迫っている場合は、「内容証明郵便」を利用し支払いの請求(催告)をすることで時効を6カ月間伸ばすことができますが、時効期間が過ぎていても相手が時効であることを主張しなければ権利は消滅しません。
◆回収不能となった売掛金がある場合は
取引先の倒産などで回収不能となってしまった場合は、貸倒損失として、税務上、損金又は必要経費として取り扱われます。
しかし、貸倒損失とするには、法的手続きにより再建が切り捨てられた場合(法律上の貸倒)、債務者との取引停止から1年以上経過した場合など(形式上の貸倒)といった一定の基準があり、回収不能に至った根拠となる証拠書類などを残すことが重要です。
2012,09,21, Friday
消費税の損金算入時期について、法人税法基本通達9-5-1にあるとおり、原則は消費税の申告書が提出された日の属する事業年度の損金の額に算入するとありますが、但し書きで未払経理したときには損金経理した事業年度の損金の額に算入してよいと書いてあります。
つまり、原則は翌期処理ですが未払経理により当期経理でOKになります。
ゆえに、例えば売上計上漏れにより追加の消費税が発生する場合には未払経理は出来ませんので原則どおり消費税の申告書(修正申告)が提出された期の損金となります。
上記は税込経理の場合であり、税抜経理の場合には売上計上漏れ自体が純額での処理となるため、経理方法によって消費税の損金算入時期にズレが発生することとなります。
税理士
楢原 英治
2012,06,05, Tuesday
ホームページが完成しました。
最新情報をこちらでお知らせしていきます。