中小企業金融円滑化法が平成25年3月を期限に終了しようとしています。
終了するに伴って、中小企業はこの3年余りの期間と同じように債務弁済のリスケジュールを受けることが困難になることが想定されます。
その際に、今回ご説明する民事再生法について中小企業の取りうる選択肢の一つとして頭の片隅に残して頂けると幸いです。
★民事再生法とは
民事再生法とは、倒産処理の法的手続の中で最も新しい法律で、平成11年12月に制定され、平成12年4月にかつての和議法にかわって施行されました。
倒産処理というと、企業の破産をイメージされる方も多いと思いますが、『民事再生法』ですので、再建型の法的整理手続きになります。
同様の再建型の法的整理手続きに会社更生法がありますが、こちらはJALやマイカル等の大規模な会社を対象としたものです。
大企業向け⇒会社更生法、中小企業向け⇒民事再生法と捉えて頂ければ良いと思います。
★民事再生法のメリット、デメリットとは
民事再生法を行うことのメリットとデメリットを簡単に記載します。
メリットは、
①申し立て時点から債務弁済がストップされるため、資金繰りの悩みから一時開放されます。
②認可決定・開始決定により、債務の大半が免除されます
(通常のケースでは債務額の8割前後が免除されます)。
③私的整理手続きと異なり、裁判所を通じて全ての債権者を舞台にあげることが出来ます。
一方のデメリットとしては、
①債権者の(ⅰ)頭数過半数の同意、かつ、(ⅱ)債権額の過半数の同意が必要であり、同意が得られない場合には破産手続きに移行されます。
②取引先からの取引継続が困難になるケースも想定されます。
③申し立てには一定の資金が必要なため、資金が不足する場合には申し立て自体が行えません。
★どのような会社が検討するべきなのか?
上記に記載したとおり、過大債務からの開放というメリットはあるものの、債権者からの同意が得られない場合には破産せざるを得ない為、慎重な判断が必要です。
但し、民事再生手続きを行う場合には裁判所への予納金や担当弁護士・会計士への報酬も考慮しなければならないため、極端に資金繰りに逼迫してからでは行えないということも考慮しないといけません。
私が検討するべきと思う会社は下記のケースです。
①営業利益が計上されているものの、過去の投資失敗等による過大債務があり、弁済可能額<<借金弁済額となっているケース
②事業部門ごとの損益を見た場合に、特定部門では利益が出ているもののその他部門での損失により全体として赤字になっているケース
2つほど例示させて頂きましたが、再生手続きには銀行や仕入先等からの賛成が必要になりますので、債権者から今後も必要とされる会社が対象です。
また、再生債権の分割弁済案と破産配当との大小関係及び、その分割弁済案の実行可能性が賛否の重要な要素になります。
簡単ではありますが、民事再生法に関するエッセンスの部分を記載させて頂いたつもりです。
中小企業が置かれている状況は依然として厳しいですが、各会社が、置かれた状況におけるベストな選択が出来るように今後も情報を発信していきたいと思います。
公認会計士・税理士
楢原 英治
~国税通則法等の改正について~
平成23年度税制改正において、税務調査手続の明確化等を内容とする国税通則法等の改正が行われました。
国税通則法等の改正に関して、具体的に変更された主な事項は以下のとおりです。
1.白色申告者に対する帳簿保存義務化
白色申告者であっても、事業を行っている場合などには、事業に関する日々の取引を正確に記帳するとともに帳簿や領収書などの書類を保存することが必要となります(平成26年1月以降)。
2.更正の請求期間の延長
納める税金が多過ぎた場合や還付される税金が少な過ぎた場合に税額の減額や還付金額の増額を求める「更正の請求」をすることができますが、請求期間が5年間(改正前:1年)に延長されます。
平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について延長されます。
3.税務調査手続きの法定化
従来からの運用を踏まえて、税務調査手続きが国税通則法において法定化されています。
改正の主なポイントとしては、事前通知事項の明確化と処分理由の記載、更正又は決定処分の期間が5年間(改正前:3年)に延長されています。
全体を総括すると、納税者の権利をより明確にするとともに納税者の義務も整えられたように思います。
税理士
楢原 英治
今回は社員旅行に関する税務上の処理を確認したいと思います。
社内の親睦を目的として社員旅行を計画しているのに、現物給与になって
所得税の課税がされるケースがあるなんて『ふざけるな~!!!』とお思いかも知れませんが、
税務上は、福利厚生費として処理するための要件は以下の2つになります。
①旅行の期間が4泊5日以内であること。
海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
②旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。
ただし、上記の2要件を満たした場合でも不相当に高額な旅行の場合には注意が必要です。
具体的には、使用者負担分が10万円以内であり、かつ、上記2要件を満たしていれば福利厚生費として処理して問題ないかと考えます。
いずれにしても、社内親睦のための社員旅行に、意図しない課税が発生しないよう配慮が必要です。
※以下タックスアンサーより引用
従業員レクリエーション旅行の場合は、その旅行によって従業員に供与する経済的利益の額が少額の現物給与は強いて課税しないという少額不追及の趣旨を逸脱しないものであると認められ、かつ、その旅行が次のいずれの要件も満たすものであるときは、原則として、その旅行の費用を旅行に参加した人の給与としなくてもよいことになっています。
税理士
楢原 英治
★繰越欠損金の有効期限が長くなりました★
具体的には、平成20年4月1日以降に終了する事業年度の欠損金について9年間の繰越が認められました。
以前は7年間の繰越でしたので、さらに使いやすくなったとも言えますが、7年間で使い切れない企業、つまり業績が芳しくない企業がそれだけ増加していることを暗に示しているのかも知れません。
なお、平成20年3月31日以前の欠損金については従来どおり7年間の有効期限となります。
税理士
楢原 英治
◆役員として取り扱われる「みなし役員」
取締役などの役員に対する給与は、定期同額であることなど損金算入するための制限があります。
税法上の役員には、取締役や監査役などの会社で規定された役員だけでなく、役員とみなされる「みなし役員」も含まれます。
みなし役員とは、下記の(1)(2)のいずれかに該当するものを云います。
(1)使用人以外で地位、職務等からからみて、他の役員と同様に法人の経営に従事している(例えば、取締役になっていない会長や顧問、相談役など)
(2)同族会社の使用人のうち、一定の要件(主な株主グループに属し、所有割合が5%超)を満たし、経営に従事している
◆使用人が「みなし役員」に該当するケースは
多くの中小企業は、社長が株式のほとんどを保有しており(2)に該当するケースは社長の親族が使用人として勤務している場合です。
その親族が株式を所有(5%超)しており、会社の経営に従事している場合は、役員として登記されていなくても役員として取り扱われます。
また、社長の配偶者については、株式を所有していない場合でも経営に従事していれば、みなし役員となります。
なお、みなし役員に該当する場合は、使用人兼務役員にはなれません。
ご注意ください。