終了するに伴って、中小企業はこの3年余りの期間と同じように債務弁済のリスケジュールを受けることが困難になることが想定されます。
その際に、今回ご説明する民事再生法について中小企業の取りうる選択肢の一つとして頭の片隅に残して頂けると幸いです。
★民事再生法とは
民事再生法とは、倒産処理の法的手続の中で最も新しい法律で、平成11年12月に制定され、平成12年4月にかつての和議法にかわって施行されました。
倒産処理というと、企業の破産をイメージされる方も多いと思いますが、『民事再生法』ですので、再建型の法的整理手続きになります。
同様の再建型の法的整理手続きに会社更生法がありますが、こちらはJALやマイカル等の大規模な会社を対象としたものです。
大企業向け⇒会社更生法、中小企業向け⇒民事再生法と捉えて頂ければ良いと思います。
★民事再生法のメリット、デメリットとは
民事再生法を行うことのメリットとデメリットを簡単に記載します。
メリットは、
①申し立て時点から債務弁済がストップされるため、資金繰りの悩みから一時開放されます。
②認可決定・開始決定により、債務の大半が免除されます
(通常のケースでは債務額の8割前後が免除されます)。
③私的整理手続きと異なり、裁判所を通じて全ての債権者を舞台にあげることが出来ます。
一方のデメリットとしては、
①債権者の(ⅰ)頭数過半数の同意、かつ、(ⅱ)債権額の過半数の同意が必要であり、同意が得られない場合には破産手続きに移行されます。
②取引先からの取引継続が困難になるケースも想定されます。
③申し立てには一定の資金が必要なため、資金が不足する場合には申し立て自体が行えません。
★どのような会社が検討するべきなのか?
上記に記載したとおり、過大債務からの開放というメリットはあるものの、債権者からの同意が得られない場合には破産せざるを得ない為、慎重な判断が必要です。
但し、民事再生手続きを行う場合には裁判所への予納金や担当弁護士・会計士への報酬も考慮しなければならないため、極端に資金繰りに逼迫してからでは行えないということも考慮しないといけません。
私が検討するべきと思う会社は下記のケースです。
①営業利益が計上されているものの、過去の投資失敗等による過大債務があり、弁済可能額<<借金弁済額となっているケース
②事業部門ごとの損益を見た場合に、特定部門では利益が出ているもののその他部門での損失により全体として赤字になっているケース
2つほど例示させて頂きましたが、再生手続きには銀行や仕入先等からの賛成が必要になりますので、債権者から今後も必要とされる会社が対象です。
また、再生債権の分割弁済案と破産配当との大小関係及び、その分割弁済案の実行可能性が賛否の重要な要素になります。
簡単ではありますが、民事再生法に関するエッセンスの部分を記載させて頂いたつもりです。
中小企業が置かれている状況は依然として厳しいですが、各会社が、置かれた状況におけるベストな選択が出来るように今後も情報を発信していきたいと思います。
公認会計士・税理士
楢原 英治
記事のカテゴリ:税務情報