金融機関等が熱心に説得して、相続税がそんなに低くなるのなら・・・と納得して、いざその時がやってきて、貸家建付地の評価減の効果も予想通りの結果となり「ここにアパートを建てなかったら、こんなに相続税が・・・やっぱり建てておいてよかった。最近は空室が目立ってアパート経営自体は苦しいけど・・・。」・・・空室???
本来なら一見落着のように思えますが、この「空室」というものが結構厄介なもので、通常貸家建付地の評価は、借家人保護の観点より、自用地と比べてその価値の低下を斟酌して一定の評価減があります。ただし、その評価減については「賃借割合」を乗ずることとなっており、要するに空室部分については、貸家建付地の評価減は認めませんよということなのです。
とは言っても、アパートの入退居というものは、かなり偶発的なものであることから、財産評価基本通達においてたまたま課税時期において「空室」であったとしても「一時的な空室」であったと認められる部分については、その部分について貸家建付地として評価しても差し支えないとしています。
そこでいくつかの「一時的な空室」として認められる条件の中で、もっとも悩ましいものが、「空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であるかどうか」という箇所です。
金科玉条の如く条文通り解釈してしまうと、3か月空室だった場合は貸家建付地の評価とならないようにも捉えられてしまいますが、この案件については国税不服審判所裁決事例にも「いかなる状況下においてかかる空室期間が生じていたか等の諸事情をも総合勘案して判断すべき」として納税者側が勝利した判例もあり、東京大阪といった大都市であればすぐに入居者も見つかるが、相続対策のアパートが林立するような競争過多な地域においては現実的に「課税時期の前後1カ月程度の空室」で済むこと自体なかなか難しいのではと思います。
ただし、その後もこのような争いは続いており納税者が似通ったケースで敗北している事実からすると、その辺の評価はかなり慎重にやらざるを得ないのが実情なのではないでしょうか。
埼玉本部 菅 琢嗣
記事のカテゴリ:その他